3.3Vと5Vの電源供給レベルの主な特徴や違いを学び、強固な電子機器の設計や製作を行います。
AUTHOR: Taddy Chung、José Bagur、LAST REVISION: 2022/11/16 00:02
3.3Vと5V
設計の際、多くの電子回路やデバイスでは、電源を選ぶ必要があります。電源電圧は通常、利便性や要件として電子回路やデバイス自身が持つ電源効率に対する要件により決定します。
3.3Vと5Vは、今日、電源供給での標準電圧レベルです。両者の電圧の差は、わずか1.7Vですが、電源効率に大きな差を生じさせるには十分です。このガイドは、電子回路やデバイスでの電源供給において、なぜ3.3Vが現在の標準電圧レベルなのかと、Arduinoによって給電される回路やデバイスで電圧レベルを設計したり、取り扱う際の一般的なヒントを紹介します。
標準的な電圧レベルの3.3V
それでは、なぜ3.3Vが標準的な電源電圧レベルなのでしょうか?設計者にとって、消費電力は常に課題で、より省電力の回路やデバイスを作成するために低電源電圧レベルが導入されました。30年以上、5Vレベルを使った、回路やデバイスへの電源供給が一般的でした。現在は、ほとんどの電子回路やデバイスが3.3Vの電源電圧レベルを使います。中には、2.5Vレベル(あるいは、それ以下の低電圧に)に移行しているものもあります。
各電源電圧レベルに対して、入力電圧と出力電圧の電圧レベルを定義する標準が存在します。この標準は、The Joint Electron Device Engineering Council(JDEX)により策定され、それが「JEDEC Standard 8-A for LV interface levels」です。JEDEC Standard 8-A for LV interface levelsは、3.3Vと5Vロジックファミリーを、以下の図のように説明しています。
上図では、
- VOL: 電子デバイスがLOW信号のときの最大出力電圧レベル
- VIL: 電子デバイスがまだLOW信号であるとみなす最大入力電圧レベル
- V
t : 電子デバイスがLOWからHIGH、あるいはその逆と解釈を切り替える閾値電圧 - VIH: 電子デバイスがまだHIGH信号であるとみなす最小入力電圧レベル
- VOH: 電子デバイスがまだHIGH信号であるとみなす最大入力電圧レベル
産業は常に進歩しています。エレクトロニクスの世界でも、トランジスタは年々小型化されています。小型化されることにより、電圧の閾値も低下しています。産業界は継続して高速な電子機器の開発に取り組んでいます。この取り組みを達成させる一般的な方法の一つが、印加電圧レベルの低下です。印加電圧レベルの低下は、ロジックレベルの変化を早めます。電力効率を考えると電力消費量は大きな問題で、より低い電圧レベルは、この目的を達成するのに役立ちます。
最終的に、チップ開発の改善とCMOS(Complementary Meta-Oxide Semiconductor)の導入による最適な電圧レベルの低下の達成により、産業界は5VのTTLから移行しました。また、デバイス開発と動作の互換性を保証する明確な規格があることはいいことです。この企画を管理するために、JDEC標準化団体は3.3Vの電圧レベルを標準の電圧レベルとするJESD8規格を策定しました。
低電力の電子機器の部類は、例えば、電圧が3.3Vから5.5V、電流が0.5Aから3Aで定義されることが多い。高電力の電子機器は、電圧が12V以上、電流が10V以上を示す。しかし、機器のこの2つの分類では、内部では3.3Vレベルを使うという共通項がある。
電気設計の要件により、電源の入力と出力は異なっても構いません。電源の入力はあいまいな電圧レベルを使うことがあり、多くの場合電圧の低下があることを意味しています。一方、ほとんどの電子部品やモジュールは電気的な仕様で規定されています。内部で使われるコンポーネントの電気的な仕様は、特定の場合の特定の特殊なコンポーネントを除き、動作電圧レベルが3.3Vとなるように設計されている。その他は範囲で規定される。
回路を壊さない方法入門
電子回路やデバイスの電源ラインを扱う全ての電子設計者は、偶然あるいは故意に回路をショートさせ、結果として、電子回路やデバイスを壊してしまう可能性があります。自己やミスは常に起こりますが、以下のいくつかのヒントに従い、それらを避けることができます。それらを見ていきましょう。
電源コードに色を付ける
電源コードへの色付けは、電子回路やデバイスの電源コードの誤接続を避けるための、もっとも簡単で効果的な視覚的な方法です。電子機器のプロトタイプを作成するとき、開発者の犯す共通のミスは、全てのコードを同じ色にしてしまい、いろいろな場所をごちゃごちゃに配線し、どのコードがどれなのか判別不能にしてしまうことです。
電源コードを色分けすれば、どちらがプラスでどちらがマイナスかを簡単に識別できるようになります。業界標準では、通常、赤がプラスで黒がマイナスです。規則や標準により、色が変わることもあります。
ヒューズを組み込む
電子デバイスを保護する簡単な方法は、電源保護回路を組み込むことです。このための設計にはいくつかあります。もっとも簡単な方法はヒューズを使うことです。
ヒューズの電子機器への組み込みは複雑ではありません。以下の回路図は、簡単な逆極性保護回路で、低電圧の直流電子機器に適用することができます。
この簡単な逆極性保護回路では、ヒューズとダイオードを使います。これを後で、負荷( Load)と呼ばれる回路に接続します。
より良い逆極性保護回路
複雑な電源保護回路を実装しても、負荷が完璧に保護されるわけではありません。部品の選択やコストにより、解決策はよりよくなります。逆極性保護についても同じことが言えます。以下の逆極性保護は、Mehdi Sadaghdar氏が設計しました。
上記の回路で鍵となるのは、過渡電圧抑制ダイオード(Transient Voltage Suppressor diode: TVS)とPチャネルMOSFETです。この保護回路は保護対象の負荷を守り、保護設計の参考となります。しかし、利用している電子部品のため、このガイドで説明する範囲よりは高度なものとなります。
過電圧・過電流保護
3.3Vの電圧で動作する電子機器に、「汚い(dirty)」電圧がかかるときがあります。これが電子機器に異常な電気的な振る舞いを引き起こすことがあります。認識できないロジック範囲に変化することで、システムを完全に不安定になったり、ロジックが強制的に変更されたりすることがあります。システムに過電圧や過電流がかかると、このような多くの望ましくない振る舞いを起こします。
この件に関して、どのようにシステムを保護すればいいでしょうか? 解決策は、先ほど紹介した逆極性保護がよりどころとなります。適切な極性反転保護に、PチャネルMOSFETとツェナーダイオードと2つの抵抗を加えることで、双方向過渡電圧抑制が実現できます。
しかし、過渡電圧抑制ダイオードを利用した簡単な逆極性保護は過電圧や過電流から保護するために利用できます。過電圧や過電流から、さらに負荷を保護したい場合は、サージ抑制を組み込み、能動的な保護を実現します。高価になりますが、負荷を保護するためには有効な方法です。
電圧調整 - レベルシフター
Arduinoボードは、3.3Vと5Vのレベルに依存します。しかし、センサーなどを駆動するのに十分な要求電圧に適合するピンが利用できないこともあります。このセクションでは、昇圧や降圧の方法を見ていきます。
高い電圧レベルや低い電圧レベルのセンサーや装置を使うために、昇圧・降圧する双方向ロジックレベルコンバーターを使います。これは、ボードに厳密な電気仕様が実装されているときのひとつのオプションです。
降圧
降圧する方法から学んでいきます。通常、外部モジュールやセンサーが必要とする低レベルまで電圧は下げられています。別の回路を操作するために、低電圧が必要となる場合もあります。電気設計が通常より複雑な場合、要求される電気的な要件を知ることが重要です。例えば、厳密な電気仕様と高速に動作する複数の信号線の操作などです。
この解決策を簡単かつ容易に実装する方法は分圧回路です。低電圧を出力するのに2つの抵抗を利用します。入力電圧と目的とする出力電圧、ひとつの参照抵抗値がわかれば、求められる電圧を出力するのに必要なもう一つの抵抗値は簡単に計算することができいます。以下に、分圧回路を示します。
この回路を使うときには、回路の出力に接続される残留容量と速い立ち上がり時間に注意する必要があります。厳密なタイミング要件のあるアプリケーションや速い立ち上がり時間に反応しないモジュールに影響が現れるからです。
昇圧
昇圧するには、ダイオードを使った少しだけ高度な電気回路が必要です。以下の回路図は、ダイオードを使って昇圧する方法を示します。
ダイオードへは注意深くバイアスする必要があり、5Vゲートの入力インピーダンスよりもはるかに低い抵抗が必要です。マイクロチップによる一つのノウハウとして、ショットキーダイオードを使い、少し高いレベルの電圧を得ることと、低位電圧の増加量を削減することがあります。以下の回路は異なる設定を使っています。
この回路ではMOSFETをスイッチとして使い、ドレインから5Vのロジックを取得します。3.3Vのロジックが反転するので、ロジック反転の対処ができるときは有効です。この回路でのMOSFETには、2N7000やBSS138が利用できます。
双方向ロジックレベルコンバーター
先ほど紹介した電気回路は単一方向のロジックレベル変換器です。異なる電圧変換を行うには、昇圧・降圧、あるいは、その逆も、電気回路全体を変更する必要があります。さらに、電子機器のサイズを考慮に入れる必要があるときには、既製のロジックレベルコンバーターを使うこともできます。
SparkFunの双方向ロジックレベルコンバーターを試験に使ったり、実装の要件に合えば、運用環境でも使うことができます。このコンバーターの利点は、与えられた参照電圧内で4チャネルの変換ができることです。高電圧レベルと低電圧レベルの参照電圧が、必要な電圧レベルとして入力されます。チャネル間でのデータ転送に、チャネルが利用されます。
上記の回路は、双方向ロジックレベルコンバーターを使い、I2Cプロトコルが利用できるセンサーとI2Cインターフェイスを確立します。SCLとSDAは、高電圧チャネルに接続し、低電圧チャネルに接続したセンサーのSCLとSDAにそれぞれ接続します。
アーキテクチャの動作により決定される高電圧から低電圧、あるいはその逆のデータ転送を行うことが目的なので、ロジックレベルコンバーターの設定は通常変更しません。このため、先ほどの回路図は一般的な接続設定を表しています。これは、Arduinoボードと、異なる電圧レベルで動作する計算モジュールと接続できます。以下の回路図は各チャネルの仕様を示していて、ロジックレベルコンバーターの回路内に焦点を当てています。
各チャネルは2つの抵抗と1つのMOSFETから構成されています。高電圧と低電圧の参照電圧を利用し、それぞれのモジュールから信号を転送します。
その他の資料
異なる電圧レベルを取り扱うことは、電気技術の広い分野にわたり、最も利用される電圧レベルである3.3Vと5Vを例外なく取り扱います。電圧レベルの取り扱いをより深く知るには、以下のいくつかのリンクを参照してください。
- Microchip社のノウハウを知るには、Microchip: 3V Tips ’n Tricksを読んでください。3.3Vと5Vレベルに関する広範囲の技術を学ぶことができます。
- 電圧レベル変換自身が科学の専門分野です。より深く学びたければ、Philips SemiconductorのアプリケーションノートAN97055の、Bi-Directional Level Shifter for I2C Bus and Other Systemsを参照してください。
参考文献
[1] Larsson, E. (2006). Introduction to Advanced System-on-Chip Test Design and Optimization. Springer Publishing.
[2] Kularatna, N. (2018). DC Power Supplies Power Management and Surge Protection for Power Electronic Systems. Amsterdam University Press.
[3] Ballan, H., & Declercq, M. (2010). High Voltage Devices and Circuits in Standard CMOS Technologies. Springer Publishing.
オリジナルのページ
https://docs.arduino.cc/learn/microcontrollers/5v-3v3
最終更新日
November 23, 2022