LPWAN(Low-Power Wide-Area Networks)入門

LPWAN(Low-Power Wide-Area Networks)とLPWANに接続できるArduinoについて学びます。


AUTHOR: José Bagur、LAST REVISION: 2022/10/05 22:00


ArduinoとLPWAN

ArduinoとLPWAN

この数年でのモノのインターネット(IoT)とマシンツーマシン(M2M)通信の急激な成長は、日常生活のほとんどすべての領域に影響を与えています。2025年までに、世界で750億代以上のIoTデバイスが接続され、動作すると予想されています。しかし、これらのIoTデバイスは、どのようにしてインターネットに接続されているのでしょうか?

一般的に、IoTやM2Mアプリケーションとデバイスは、低消費電力で低速のデータ送信に対する要求があります(データはセンサーから収集されます)。これまで、これらのアプリケーションとデバイスを接続するのに利用される技術は、以下の図に示すように、IoTアプリケーションにとっては理想的なものではありませんでした。例えば、WLANs(Wireless Personal Area Networks)とBluetooth®は、近距離の中速から高速データ通信用に設計されました。2Gや3G、4G、5Gなどの移動体通信ネットワークは、中距離の高速データ通信用に設計されました。これらのネットワークは、通常、音声やデータ、画像通信に利用されています。IoTやM2Mアプリケーションやデバイスの要件を満たすためには、何らかの進化が必要でした。

2013年に現れたLPWANという用語は、Low-Power Wide-Area Networkを意味します。これは、小さいデータパケットを、低いデータ転送レートで比較的長距離を一般的なネットワーク技術(例えばWLANsやBluetooth)よりも低消費電力で無線通信するネットワーク技術を表現する一般的な用語です。小さいデータパケットを、低消費電力で、広い通信範囲を実現する通信は、IoTやM2Mデバイスとアプリケーションにとって理想的な特性です。

無線の通信範囲

無線の通信範囲

LPWAN技術の種類

近年、非セルラーベースネットワークと、セルラーベースネットワークの、大きく2つのLPWAN技術の分野が現れました。これらの技術は、免許が必要な周波数帯、あるいは、免許が不要な周波数帯を使用し、プロプライエタリ、あるいは、オープン標準の技術を使います。SigfoxとLoRaWAN®、NB-IoT、LTE-Mという、主要な広く展開されているLPWANについて紹介します。

非セルラーベース技術: SigfoxとLoRaWAN®

現在、最も広く利用されているLWWANの一つが、Sigfoxです。このプロプライエタリの超狭帯域のLPWAN技術は、868MHzや902MHzの周波数帯のネットワークで動作します。これらの周波数帯は免許不要の産業科学医療(ISM: Industrial, Scientific and Medical: ISM)用の周波数帯です。このネットワークは、郊外では30~50km、都市部では3~10km、直線距離で最大1000kmまでの距離まで、メッセージを伝送できます。パケット量は一日当たり、上りは12バイトのメッセージが140回(訳者註: 原文では150回となっていました)まで、下りは8バイトのメッセージが4回までに制限されています。

LoRaは物理層の技術で、免許不要のISM周波数帯で動作します。LoRaは、チャープスペクトラム拡散(CSS)技術に基づいています。LoRaは、基本的には、シングルホップ技術で、LoRaセンサーから受信したメッセージをゲートウェイ経由で中央のサーバーに送信します。LoRaがサポートするデータ転送速度は300bpsから50kbpsにわたります。インターネットでLoRaをサポートするために、LoRa Allianceは、LoRaWAN®を開発しました。これは、ネットワークと上位層の機能をサポートします。LoRaWAN®は、IoTアプリケーションの幅広い要求に対応するために、3つのクラスの端末デバイスを提供します。

セルラーベース技術: LTE-MとNB-IoT

Long Term Evolution for Machinesを意味するLTE-Mと、Narrowband Internet of Thingsを意味するNB-IoTは、3rd Generation Partnership Project(3GPP)によって開発された無線通信技術の標準です。3GPPは、Global System for Mobile Communications(GSM)標準やLong Term Evolution(LTE)を含む、全ての主要なモバイル通信標準に責任を持つ国際標準化団体です。SigfoxやLoRaWAN®とは異なり、LTE-MとNB-IoTは無線通信事業者により運用されています。

LTE-Mは既存のLTEネットワークと互換性があり、LTEネットワークと同等の拡張サービスエリア(coverage)と、5Gネットワークと同等のM2Mアプリケーション向けサービスエリア(coverage)を提供し、5G M2Mソリューションへの円滑な道筋を提供します。LTE-Mは、可変データ転送速度の提供と、リアルタイムおよび非リアルタイムアプリケーション双方の提供に注力しています。数秒程度の遅延があっても動作する高遅延アプリケーション(deferred traffic application)だけではなく、低遅延アプリケーションもサポートします。低消費電力で、低帯域から1Mbps程度の広帯域までサポートしています。LTE-Mは、幅いろいメッセージサイズのデバイスもサポートしています。

NB-IoTは、700MHzや800MHz、900MHzの認可された周波数帯でGSMやLTEと共存できます。NB-IoTはLTEの機能を最適化・削減し、データ通信の頻度が少なく低電力で動作するように設計されています。NB-IoTでサポートされているデータ転送速度は、下りが200kbs、登りが20kbpsです。各メッセージの最大ペイロードサイズは1600バイトです。

LPWANのアプリケーション技術

LPWANは、スマートメーターやスマートライト、資産管理や監視、スマートシティ、精密農業、家畜監視、エネルギー管理、製造業、産業用IoT開発などで広く使われています。LPWANの選択は、特定のアプリケーション、すなわち、要求される速度やデータ量、サービスエリアに依存します。

LPWANは、小さいメッセージを少ない頻度で送信するアプリケーションに最適です。ほとんどのLPWAN技術は、下り通信も提供しています。既存のモバイルネットワークよりも低電力、長距離、低価格で、以前は予算や消費電力の制限で制限を受けていた多くのM2MやIoTアプリケーションを、LPWANは実現します。

現在のLPWANアプリケーションのいくつかの例を示します。

  • スマートメーター(コネクティッド電力計: 地下のセンサー)
  • スマートパーキング(コネクティッド駐車場: 地上や地価のガレージのセンサー)
  • スマートごみ管理(コネクティッド公共ごみ箱)
  • アセットトラッキング(ケージやパレット、コンテナなどの荷物運搬の全国でのトラッキング)
  • コネクティッド建築物(橋やトンネルに設置したセンサーが、温度・湿度腐食を測定し、目に見える損傷が発生する以前に脆弱性を認識死す)
  • 状態管理(建築物や機械、自動車などに取り付けたセンサーが故障や盗難を認識します)

Arduino®とLPWAN技術

Arduino MKRファミリーは、LPWANへの接続のための、いくつかの選択肢があります。

LoRaWAN® (MKR WAN 1300/1310)

MKR WAN 1310

MKR WAN 1310

MKR WAN 1310は、LoRa®やLoRaWAN®の実験用開発ボードです。世界中をカバーするLoRa®のプラットフォームを使い、The Things Networkに簡単に接続できます。ポイントツーポイント接続にも使われ、2つのMKR WANボード間の通信を簡単に設定することができます。

サービスエリア

The Things Networkへの接続を計画しているのであれば、LoRa® Gateway mapで利用可能なゲートウェイを確認することができます。独自ゲートウェイを設置することで、複数のデバイスを接続し独自ネットワークを構築することもできます。

MKR WANライブラリ

MKR WAN 1300/1310に搭載されているMurata CMWX1ZZABZの利用には、MKRWANライブラリが利用できます。

LoRaライブラリ

2つのMKR WAN 1310ボードを接続する通信を簡単に設定するには、Sandeep Mistry氏によるLoRaライブラリを参照してください。

ドキュメント

MKR WANボードの公式ドキュメントは以下にあります。

NB-IoT/LTE-M(MKR NB IoT)

MKR NB 1500

MKR NB 1500

MKR NB 1500は、グローバルでの利用を考えて設計された開発ボードで、LTEの Cat M1/MB1バンドの、1、2、3、4、5、8、12、13、18、19、20、25、26、28に接続できます。

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この周波数帯でサービスを提供する通信事業者は、Vodafone、AT&T、T-Mobile USA、Telstra、Verizonなどがあります。

サービスエリア

NB-IoTとLTE-Mのサービスエリアは、ヨーロッパや南北アメリカ、アジアの大部分など、多くの地域があります。

MKR NB 1500は、利用したいRAT(Radio Access Technology)を選択するオプションで、NB-IoTかLTE-Mで接続するよう設定することができます。モデムは、メインとバックアップネットワークを利用するように設定することも可能です。

全サービスエリアを知るには、NB-IoT / LTE-M coverage mapを参照してください。

MKR NBライブラリ

MKR NB 1500に搭載されているuBlox SARA-R410M-02Bモデムの利用には、MKRNBライブラリが利用できます。

ドキュメント

このボードの公式ドキュメントは、MKR NB 1500ドキュメントページを参照してください。

Sigfox(MKR FOX 1200)

MKR FOX 1200

MKR FOX 1200

MKR FOX 1200は、Sigfox基盤を使ったLPWANソリューション向けに設計された開発ボードです。

全てのMKR FOX 1200には1年間のSigfoxデータプランの利用権が付属しているので、Sigfoxネットワークの試験に有用です。Sigfoxのウェブサイトで、一日当たりのメッセージに関するプランの利用条件を確認してください。

サービスエリア

Sigfoxネットワークは世界の異なる地域に存在しますが、多くはEU内で運用されています。サービスを提供している他の国には、アメリカや日本、オーストラリア、南アフリカ、ニュージーランドなどがあります。

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EU外でもサービスを提供していますが、サービスエリアはその国の特定の地域内に制限されています。

サービスエリア全体は、Sigfox’s own coverage mapを参照してください。

Sigfoxライブラリ

ATA8520というSigfox送信機に関しては、Sigfoxライブラリを参照してください。

ドキュメント

このボードの公式ドキュメントは、MKR FOX 1200ドキュメントページを参照してください。

オリジナルのページ

https://docs.arduino.cc/learn/communication/low-power-wide-area-networks-101

最終更新日

November 6, 2022

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